2009年6月5日星期五

クローズアップ2009:インフルワクチン 「新型」「季節性」どう配分


インフルエンザワクチンの作り方






















クローズアップ2009:インフルワクチン 「新型」「季節性」どう配分
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 ◇年間製造能力は2800万回分
 世界各地に急速に広がった新型インフルエンザ。北半球では感染の拡大が収まりつつあるが、季節性インフルが流行する秋冬に「第2波」が来ることが懸念される。スペイン風邪(1918年発生)のように毒性が強まる恐れもあり、新型ワクチンへの期待は大きい。だが、国内のワクチン製造能力には限界があり、毎年一定の犠牲者を出す季節性インフルに備えたワクチンと、どう製造量を配分するか、月内にも下される政府の判断が注目される。

 ◇流行と毒性で判断
 国内では何回分の新型ワクチンを準備できるのか。厚生労働省によると、ワクチンの年間製造能力は、1回分当たり1~2個必要とされるニワトリの有精卵の生産数が限られているため約2800万回分。これを新型と季節性に割り振る。新型分を増やせば、1万人前後の死者が出る季節性分を減らさなければならないリスクを負うため、配分割合が焦点となる。

 ポイントは(1)新型と季節性の流行度合い(2)新型の毒性(健康被害)の程度--などだ。スペイン風邪などの新型が大流行した際、従来目立っていたウイルスの流行が収まる傾向がみられた。南米チリ保健省は、現在流行中のインフルエンザの9割が新型で、季節性に取って代わった可能性を指摘した。

 だが、今回の新型は過去データがなく、流行予測は難しい。国立感染症研究所(感染研)の田代真人・インフルエンザウイルス研究センター長は「仮に配分割合を新型に多くして、季節性の健康被害が増えるようでは、意味がない」と語る。

 接種対象者数と、だれを優先するかの検討も必要だ。新型インフルの場合、免疫がないためほぼ全員が2回のワクチン接種が必要となる可能性が高い。2800万回分すべてを新型に配分して接種方法を工夫したとしても、接種対象者は大幅に減る。このため政府は糖尿病やぜんそく、妊婦など重症化しやすい人を優先するなど、接種対象者の絞り込みが求められる。

 さらに、09年度は強毒性鳥インフルエンザ(H5N1型)のプレパンデミック(大流行前)ワクチンが備蓄用に1000万回分生産されることになっている。新型分の卵が不足した場合、強毒性分を転用することが可能だが、政府はその配分割合をどうするかの判断も迫られそうだ。

 世界保健機関(WHO)は、各メーカーが新型ワクチンの開発を終えるのは6月末か7月上旬とみている。ワクチンの配分割合などに関する勧告については「そのころに作り始める必要がある」(ケイジ・フクダ事務局長補代理)として、静観の構え。米疾病対策センター(CDC)は、すでにワクチン製造で使うウイルスをメーカーに渡し、10月にも接種を開始できる見通しを明らかにした。

 一方、日本政府は勧告を待っているが、早ければ7月にも新型ワクチンの製造を始めるという。【関東晋慈、ジュネーブ澤田克己】

 ◇有精卵から製造、7月着手で10月出荷も
 インフルエンザワクチンは1937年、有精卵でウイルスが増殖することが発見され、製造が可能になった。現在、世界のほぼすべてのメーカーがこの方法を採用。日、米、英、フランス、カナダなどの先進国では年間約3億5000万人分が製造されている。

 日本では、財団法人阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)▽北里研究所(埼玉県北本市)▽デンカ生研(東京都中央区)▽財団法人化学及血清療法研究所(熊本市)--の4団体が製造。春先から季節性ワクチンの製造は始まっている。

 ワクチンは、毎年流行するA香港型、Aソ連型、B型のウイルスそれぞれを有精卵に接種し原液を培養、3種を混合して作る。製造に使うウイルスは、感染研が、次の季節の流行予測やWHOの判断などを検討して厚労省に報告し、同省が公表する。

 阪大微生物病研究会観音寺研究所(香川県観音寺市)には毎週50万~60万個の卵が近くの契約業者から持ち込まれる。注射針でウイルスを接種された卵は、ふ卵室で2~3日培養され約8時間冷却後、培養液を採取する。これをろ過装置と遠心分離機などで濃縮、除菌して原液とする。

 安全性試験などの国家検定を経て製品化には2~3カ月かかる。多田善一シニアマネジャーは「7月に新型ワクチンの製造に着手できれば、10月の出荷に間に合う」と話す。

 培養法はほかに、海外の一部メーカーが昆虫などの細胞で培養する「細胞培養法」がある。この方法は約2カ月で製品化できるが、日本では臨床研究中で来季には国の承認が間に合わないという。【高野聡、関東晋慈】

 ◇冬本番の南半球、感染拡大続く
 冬本番を迎えた南半球の国々では新型インフルエンザの感染拡大が続く。チリでは感染者が急増し、1日現在313人。オーストラリアでも2日、約500人となった。WHOやCDCなどによると、2日夜(日本時間)現在、新型インフルエンザの感染者は計66カ国・地域で約1万9000人を超え、死者は4カ国で計117人となっている。【メキシコ市・庭田学】

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 ■ことば

 ◇ワクチンと治療薬
 インフルエンザに対する医薬品は、ワクチンと治療薬がある。ワクチンは感染前に接種し、発症や重症化の予防を目的とする。国内で使われる治療薬は「タミフル」と「リレンザ」で、発症後の解熱目的で使う。

 ワクチン療法は毒性をなくしたウイルスを接種し、体内にウイルスを中和する抗体をあらかじめ作っておく。感染しても速やかに治癒する効果がある。治療薬は「ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬」とも呼ばれ、発症後48時間以内に服用し、ウイルスの増殖を担うたんぱく質(NA)の働きを抑える。

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毎日新聞 2009年6月3日 東京朝刊

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